心地良い空間を作り出すには。矛盾から生まれた私たちの強み リアルゲイト代表・岩本裕インタビュー【前編】日本橋エリアを盛り上げる強者たちの挑戦(2)

創業した2009年から現在までに東京都を中心に30棟の施設を企画・運営するシェアオフィスの先駆けである株式会社リアルゲイト。不動産開発やリノベーションプロジェクトにおいて、豊富なクリエイター人脈を抱え、企画・デザインからリーシング・プロモーション・運営まで行う。母体となるトランジットグループと連携したワンストップサービスが強みの会社。

2016年11月、日本橋富沢町に新たな施設「&WORK NIHONBASHI」をオープンします。前編は、岩本社長に株式会社リアルゲイトを立ち上げた経緯と、シェアオフィスのリーディングカンパニーとしての強みについてお話を伺いました(インタビュアー:YADOKARI 熊谷賢輔)

代表取締役社長 岩本裕さん プロフィール
東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。一級建築士・一級建築施工監理技士・宅地建物取引士。ゼネコン・デベロッパー勤務を経て、2009年8月「リアルゲイト」を立ち上げ代表を務める。表参道と有楽町の人気シェアオフィス「PORTAL POINT」、青葉台のコミュニティープレイス「THE WORKS」、シェアオフィスにサービスアパートメントが併設した「HIVE TOKYO」等、クリエイター層をターゲットとしたオフィスのプロデュース・運営を手掛ける。今冬には、クリエイターが集まる「NAKAME GALLERY STREET at中目黒高架下」やゲストルームが併設された「THE MOCK-UP BY PORTAL POINT」等、新しいスタイルのクリエイティブスポットがオープン予定。立地、デザイン、サービス、そしてコミュニティといった不動産に関する様々な価値に一貫性を構築し、オンリーワンの不動産商品を創造する。

新しい会社を創業するしかなかった

熊谷 本日は宜しくお願いいたします。岩本社長は、過去にどのようなお仕事をされていたのですか?合わせて、株式式会社リアルゲイトを立ち上げた経緯も教えてください。

岩本 大学を卒業して5年ほどゼネコンで現場監督をやっていました。27歳の時、大手マンションデベロッパーに転職し、30歳の時に自分で土地の仕入れ企画など一貫してしたいと思い、当時未上場だった新興ディベロッパーに行きました。そこが35歳の時に上場して、37歳の時にリーマンショックにより債務超過に陥ったんです。

その新興ディベロッパーで「the SOHO」を企画して完成後の運営とリーシング(客付け)を予定していましたが、その会社ではそれ以上業務を続けることが困難になり、その会社を退職し㈱トランジットジェネラルオフィスの力を借りて、不動産会社㈱リアルゲイトを立ち上げ、その会社で「the SOHO」の運営業務の一部をスタートさせたのが会社設立のきっかけです。生き抜く為に止むを得ずということですね(笑)

リアルゲイトは1物件の一部の仕事を受けるために作ったので、前の会社から連れてきた社員と一緒に2人でスタートしました。それが7年前になります。今では、社員も30名近くになり、運営中の物件も約20棟、工事中の建物や、計画中のものをいれると、30棟ほどになります。

日本橋富沢町に新たな施設「&WORK NIHONBASHI」がオープン
日本橋富沢町に新たな施設「&WORK NIHONBASHI」がオープン

良い意味で何にも染まっていない町

熊谷 都内を中心で、主に渋谷・港区中心ですね。そうなると、今回の日本橋は初めての新施設(&WORK NIHONNBASHI)ですね?

岩本 私たちは、クリイエイター向けの小規模オフィスの企画を得意としてますから、それが評価されるとなると必然的に渋谷・青山中心になりますね。だから、リアルゲイトの本社も青山にあります。

有楽町でもプロジェクトをやっていますが、日本橋のようなエリアは初めてです。それでも、私たちがやることは一緒。いい物件つくり、そこに感度の高い人を呼ぶだけです。通りによっては空洞化していますが、逆に何にも染まっていないのがいいですね。

私たちが作るのは大規模オフィスではありません。ターゲットとなる4人から10人くらいの規模の会社は、マンションや共用部の無い小規模ビルで働いているケースが多いと思っています。日本橋にも、マンションや小規模ビルが多いし、別エリアにいる感度が高い人たちにも来てもらえれば、日本橋エリアは活性化すると考えています。

「&WORK NIHONBASHI」内のオシャレなオフィス空間
「&WORK NIHONBASHI」内のオシャレなオフィス空間

ビルを丸ごと一棟借りる理由

熊谷 リアルゲイトはシェアオフィスのリーディングカンパニーだと認識しています。他社とはどのような部分で差別化を図っていますか?

岩本 まず私たちの世界観を伝えるには、オフィスの内部だけでは不可能です。外観を変えたり、エントランスを変えたり、屋上にテラスを作ったり、そしてその運用方法自体もまったく新しい物にしなければなりません。またオフィス内部においても、クリエイティブな部分を残します。原状回復しなくてもいい。そういう物件を好む人は、職業が何であれ、根っこがクリエイティブな人が多い傾向にあります。こちらがカーペットを敷いて、蛍光灯をつけても、借りるお客様はそれを求めていなかったりします。

退去するときに入居者が原状回復しなければならないことを考えると、なかなか思い切って内装をいじることはできないですよね。無駄な仕上げと、無駄な原状回復と無駄な費用と保証金。この一連の作業に矛盾を感じていました。そうであれば、法律的にもお客様の負担を軽くできないか、と考えた結果、一部をスケルトン状態で仕上げる貸し方になりました。それが差別化にもなりました。ふつうのオフィスを好む方もいれば、こういう場所で自分たちの空間を作りたいという人もいるので、私たちはその層を狙っていますね。

シェアオフィスというと、机貸しや、小さい箱貸しというイメージなんですけど、我々が提供したいものは決して小さくはありません。クリエイティブな外観の中に、屋上やラウンジがあって、そこで食事をしたりミーティングをしたりしてほしい。そして建物自体のルールも変更することで、無駄なコストを掛けずに自由に内装を楽しんで欲しい。それって雑居ビルの一室を借りるだけではできないことです。私たちがビル1棟のリノベーションにこだわる理由はそこですね。

FacebookとInstagram、あなたはどっちが好きですか?

熊谷 ビル1棟借りるとなると入居者の人数が、かなり多くなります。御社のシェアオフィスで横の繋がりはありますか?

岩本 同じエリアで、同じ感度で集まっている人達なので、自然と感性は似てます。よく、意図的な交流会の場を提供している場合がありますけど、強制的なものをつくってしまうと、迷惑を被る人もいます。どこの誰だか分からない人達の集団ではなく、本来であれば、どういう仕事をしているのかを公表するのが良いかと思っています。

この人はWebを作っている会社の人、この人はカメラマンさん、とか。そういう仕組みと場所を提供することを意識しています。最初の枠だけこちらで提供すると、みなさんがなじんでくるんですよね。そういう状況になると、退去も少なくなります。多少手狭になってもすぐに出ていかずに、そのまま居てくれるんですよ。

オフィスとして入居する、ということが大前提としてあるので、まずは入居者が心地よく働けて、業績が伸びるということが大事だと思っています。入居者同士は友達を作りに来ている訳でもないし、交流をメインに考えている訳でもありません。また、横のつながりを重視しすぎると、逆につながりにくくなってくるんです。押しつけがましくなく、自然なつながりをいかにつくることができるか、が大事。FacebookよりInstagramくらいが心地良いや~みたいな(笑)何が良いのか?と常に考えるようにしています。とても難しいですけどね。

青山にある本社内の広々とした共有スペース
青山にある本社内の広々とした共有スペース

オフラインだからこそ起きる化学反応

熊谷 岩本社長が思い描かれていた理想の事業に近いですか?

岩本 それは近いですよ。少しずつやっていた事業ですが、今や30棟近くになっています。その入居者を一堂に集めて何かできないか、と考えたりもします。今は、オフィスビル内にホテル作っています。ホテルを外部の方に貸してしまうと民泊問題につながる可能性がありますが、オフィスに入居している人向けにゲストルームとして貸すというビジネスモデルならば、何ら問題ないはずです。オフィスという枠を超えて、住まいや食のイベントを組んでいったら面白いですよね。

熊谷 オンライン・オフライン上のつながりは、人とつながるという意味では同じですが、濃さが違いますよね。岩本社長はこれらについては、どのような違いがあると思われますか。

岩本 不動産はリアルなものです。人がそこにいて、話すことができて、共感もできる。自分が気に入った空間にいれば、色んな業種の垣根を越えて、面白い化学反応も起こり得るはず。私たちの不動産の場合、アーティストやシステムエンジニア、弁護士のように多種多様な業種が集まっているので、その可能性も高い。例えばそれがオンライン上のつながりだと、面白い化学反応が起こりづらいのかなと思います。リアルなつながりが面白いですし、私自身もそれが心地いいと感じますね。

無理しなくてよいつながりです。集中したいときはワークスペースで集中するし、リラックスしたいときは屋上で息抜きするとか。やはり心地よいことが大前提なんじゃないかな。ワークスペースとしての心地よさはきちんと担保されていて、その上で心地よい程度で人とのつながりも感じられて良い刺激も受ける。そういう空間が私の理想です。

大きな決断の後に起こったこととは?

社会人になられてから長い間、不動産に関わり続けてきた岩本社長。以前いた会社が多額の債務超過に陥り退社するという逆境を乗り越えて、今ではシェアオフィスのリーディングカンパニーとしての地位を築かれました。なぜここまで会社が大きくなったのでしょうか?

後編は、会社を大きく成長させた2つの決断と、日本橋を盛上げるための会社としての存在価値についての話をご紹介いたします。(後編記事はコチラ

株式会社リアルゲイト

https://www.realgate.jp/

日本橋 新施設「&WORK NIHONBASHI

〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町10-13

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&WORK NIHONBASHI 35.689749, 139.782615 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町10-13この記事のURL:http://bettara.jp/interview/597/東京都中央区日本橋富沢町10-13 (ルート検索)